職人と芸術家の違い2009/12/23

へちがら

   職人と芸術家の違い

「工芸作家」と呼ばれる「芸術家」と、「工人」「技能者」などの呼び方をする「職人」とはどこが違うのだろう。

「工房」をもって「先生」と呼ばれて○○会審査員とか肩書きがつく偉い人を「作家」と呼ぶのだろうか。お金をもうけるために工芸を職業とする人を職人と呼ぶのだろうか。

作品に作者の名前がつくのが「作家」で、無名で製品を出すのが「職人」なのだろうか。どうも、そんな些末な違いではなく、本質的な違いがある。

同じ物を二度と作らないのが作家、つまり芸術家だ。

正確に同じ物をいくつでもつくれるのが職人、つまり技術者だ。

自分はそのように定義している。

芸術家は創造が本質だから、同じ物を二度とつくってはいけない。まったく同じ絵を二枚描いた絵画の巨匠はあまりいない。それは弟子なり、贋作作り手がやる事だ。

芸術家の創作のエネルギーはいつも新しい物作りに向けられる。同じ事を繰り返せば、マンネリ化したとか批判される。展覧会をやって、「去年とあまり同じですね・・」とか言われたら作家失格と言う事になる。

職人は、反対だ。お皿を100個注文されたら、正確に同じものをつくらないといけない。微妙な違いは別としても、食器売り場で特定の目的の器を買う度に大きさが違っていては、使い手が困る。
商品は斉一性が求められる。納期に間に合わせて、きちんと完成させるのも職人の技のうちだ。

どちらが難しいか。実は、どちらも同じように難しい。創造的な作品のためには限りなく試作を繰り返す必要がある。創意工夫のめにに心身を削って打ち込むのが芸術家だろう。

同じ物をつくる職人は、それに較べて気楽だろう・・と思ったら大間違いで、同じ物を二つつくるには、また別の神経をすり減らす作業が控えている。例えば、木工でも陶芸でも「ろくろ」作業には、あまり物差しが使えない。

職人の勘だけで、正確に同じ寸法のものを作る。これは凄い事なのだ。心身の安定や、呼吸を整え方など、悟りの境地のような修行によって成し遂げられる技だ。芸術とは違う、職人技の固有領域だろう。

職人技と、芸術家魂、どちらも世の中になくてはならない資質だ。どちらになれるかは、遺伝子が決めているとしか言いようのない部分がある。どちらがより高度という事なく、それぞれの高みがある。芸術家魂が広げた人間の美の世界と、職人魂が支える人々の暮らしが、共に人間世界を豊かにしている。

さて、編集長はいったいどっちだ・・・・多少とも工芸もどきに関わっているわけだが、どっちの立場なのか。

同じものを二度と作らないと言えば、編集長は同じものを二度と「作れない」。作らないのでなく、作れないのだ。要するに下手くそなので、思い道理にいかずに、つくる度に寸法が違ってしまうだけだ。「全作品がオリジナル・・・」と言えば聞こえは良いが、下手でばらばらなものしか作れない。もちろん芸術でもなんてもなく、資源無駄遣いの地球温暖化の原因にしかなっていないかも知れない。

本日はろくろ作業で、山桜の木でお皿、ヒメシャラでぐい飲みをつくった。二度と同じものは作れない・・・

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