総意のモニュメント2011/02/18

創作短編

  総意のモニュメント 

 ある彫刻家が、町を象徴するモニメントを町長に頼まれました。それを見て、みんなが未来のまちづくりに夢を描けるようなモニュメントです。自分のアイデアで一気につくろうとも思ったのですが、みんなの総意で作れと言われたので、部分部分をみんなにも作ってもらう事にしました。

 ある人は魚の形。ある人はミカンの形。リンゴの形。梅の形。ある人は泳ぐ人の形。 ・・・・もう、まちの人数だけの形が出来て、全部つなぐと何の形だか分からない塊になってしまいました。そこで、ミカンも梨もリンゴも果物としてまとめる・・・梅も桜も花としてまとめる・・・そんな風に抽象化していく事にしました。それを繰り返したら、きっとみんなの「総意」になると思ったからです。

 骨格のモニュメントをつくり、みんなに示して、気に入らない所は削ってもらう事にしました。骨格モニュメントは、みんなが文句をつけて、腕がもがれ、枝が削られ、だんだん小さくなっていきました。

 不都合な所が削られつくして、しっかりした「総意」のモニュメントができました。除幕式で現れたのはなんと、町の名前が小さく刻まれたゆがんだ石でした。どこにでもある町の看板みたいです。

 それから数年が立ちました、駅前の看板が未来を切り拓くモニュメントである事は、今は誰も知りません。

編集長の蛇足

 どこかの町でおこった何か事件の寓意なんでしょうか。寓意と考えると、ミカンとか、魚とか、いろいろ解釈できそうですね。もう少し寓意の小道具になるミカンとか魚といった名詞を工夫すると良いですね。

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